くすんだピンクのボディに、同系色の横長のプリント。右側には、縦にMcGILLの文字が入っています。大きな絵で押し切るというより、少し離れると生地と図柄がなじんで見える一枚です。
Tictionaryで1990年代のMike McGill Tシャツとして記録している実物(詳細は会員向け)です。ここでは、その名前を手がかりに、スケートの図案を描いた人物へ少し寄り道してみます。今回取り上げるのは、V.C. Johnson。Vernon Courtlandt Johnsonという名前の、Powell-Peraltaと関わりの深いアーティストです。
最初に、写真の一枚と以下の代表作は分けておきます。この横長の柄を、後述するSkull & Snakeと同じ図案として紹介するものではありません。この個別のプリントの作者も、今回の資料では確認できていません。古い服に残るライダー名から、作者の仕事へ進むための入口として選びました。
McGillの名前と、描いた人の名前
Mike McGillはライダーの名前で、V.C. Johnsonは描き手の名前。同じ一枚の背景に出てきても、役割は異なります。古着の説明で「誰のTシャツか」と尋ねるとき、この二つが一緒になりやすいところです。
Powell-Peraltaの公式説明では、McGillのSkull & Snakeは1984年に登場し、作者はVernon Courtlandt Johnsonとされています。また、蛇と稲妻には、故郷フロリダを背景にしたMcGill自身の提案があったと記されています。
ライダーの個性を、別の人が絵にしていく。その関係を知ると、名前だけで選んでいたスケートTシャツにも、もう一人の顔が見えてきます。ブランド名、ライダー名、作者名を分けてメモしておくと、同じ作者の別の仕事を探すときにも役立ちます。
ただし、代表作の由来は、その人物に関係するすべての柄の由来ではありません。冒頭のMcGillシャツにも、蛇と稲妻の話をそのまま当てはめることはできません。図案の一致を確かめてから背景を結びつける。このひと手間で、一枚の説明がずいぶん確かになります。
Ripperは、最初からボードの絵だったわけではない
Johnsonの仕事をもう一つ見るなら、Ripperがあります。ブランドの公式解説によると、1983年の図案で、最初は販売店の窓に貼るステッカーとして使われ、その後Tシャツ、デッキへと展開しました。
スケートの絵だから、ボードから服へ移ったのだろう。そう考えたくなるところですが、この例では順序が違います。店の窓、身に着ける服、足元の道具。絵が置かれる場所をたどると、アメリカのスケートショップで人が何を目にしていたのか、想像する入口が増えます。特定の店を訪ねた記録ではなく、公式に説明された使われ方からの見方です。
窓なら、通りがかりに見える大きさ。服なら、体の動きやプリントの位置。デッキなら、細長い面の中での収まり。同じ図案でも、見る条件は変わります。復刻品の公式写真と手元の古い服を見比べるときも、輪郭だけでなく、どこに、どの大きさで置かれているかに目を向けると面白いです。
ここでいう1983年は図案の年です。図案が生まれた年を、そのままTシャツの製造年にすることはできません。冒頭の一枚についても、1990年代という表記は既存のアーカイブ記録を参照しており、今回新しく現物を鑑定したものではありません。
スケートの外にも続いている、白と黒の仕事
Johnson本人のサイトでは、スケート以外の白黒作品も紹介されています。ペン、筆、木版、スクラッチボード。商品で見慣れた名前から入り、描く方法の違いへ進めるところが、このサイトの楽しさです。
Pen & Inkの作品一覧には、1974年表記の《Skull Study》、1980年表記の《Skull》、1988年表記の《Ry Cooder T-Shirt》があります。スカルと音楽の仕事を、同じ作者のページで見つけられます。これらを特定のスケート図案の下絵と断定する資料はないので、ここでは別々の掲載作品として見ています。
ページを開いたら、まず一枚だけ選んでみてください。輪郭を太い線で残しているところ、細い線を重ねて暗くしているところ、何も描かず白を残しているところ。モチーフの名前を読む前に、線の違いを追ってみると、商品名を調べるだけでは気づきにくい部分が見えてきます。
そのあとでTシャツの写真へ戻ります。インクと生地の色が近い冒頭の一枚なら、線の細部より、横長のまとまりや文字の位置が先に目に入るかもしれません。これは同じ作者だという比較ではなく、「絵そのもの」と「服の上での見え方」を別々に見る練習です。薄く見えるプリントも、写真だけで洗濯による退色や元の配色まで決めつけないようにします。
一枚から、もう一人へ
スケートTシャツには、ブランドや選手の名前が大きく残っています。描いた人の名前は、同じ大きさでは見えてこないことがあります。それでも、公式の作品解説から作者を確かめ、本人の作品へ進むと、関心は一つのブランドの外にも広がっていきます。
次に気になる一枚を見つけたら、「何年のものか」に加えて、「この絵を描いたのは誰だろう」と考えてみる。分からない柄は、分からないまま写真と出典を残しておく。それくらいの余白があっても、古いTシャツを眺める時間は十分に楽しくなります。
関連する読み物:Bones Brigadeから見る、チームと映像の文化。今回はチームの成り立ちから一歩離れ、描き手を探す楽しみを取り上げました。
写真:Tictionary既存実物資料(メディア2951)。AI生成画像ではありません。資料確認:2026年9月25日。本文は新規執筆で、旧ブログの記事の転載・再編集ではありません。
